提供者 T.Yさん
これは僕が高校生だった時に体験した話です。始めに言ってしまうと幽霊を見てしまったとか云う話ではないです。なので、怪談体験と言える物ではないかもしれませんが、今でもお墓を連想してしまうお盆時期には当時の事を思い出して身の毛がよだつ事があるんですよね。
僕が住む北海道の謀港町にはT丘霊園と云う広い墓地があります。
当時流行っていた噂で其処の墓地には一つだけキリスト教徒のお墓が有って、十字架の形をしていると云うのがありました。
しかも宗教上の理由からなのか、お墓の前には遺体が土葬で埋められており何でも十字架の前で幽霊とか変な物を見たと云う人が何人も居たそうです。
好奇心旺盛な高校生達に取っては凄く興味もあるし面白そうな噂です。僕は悪友達と数人で夜のT丘霊園に肝試しに行く事にしました。
夜の墓地なので辺りは暗く確かに気持ち悪さはありましたが、僕たちはそんな怖さよりも集団で肝試しに来た事で変なテンションも有り、ただただはしゃいでいました。
今になって考えてみたら結構罰当たりで非常識な行動を取っていた物ですよね。
でもT丘霊園は結構広いし、噂の十字架墓地も場所の心当たりが全くありません、最初の内は友人たちと一緒に探し回っていましたが、結局見つからず僕たちも飽きてしまったので十字架のお墓を見に行くのは諦めて其処でかくれんぼをする事にしました。
夜の墓地で各々が散らばりお墓の後ろとかに息を潜めて隠れます。
そして僕の奇妙な体験はその時に起こりました。
鬼役の友人に見つからない様に何処か隠れられそうな所を探そうと走って一人で奥の方に行ったその時です。
「キーーン・・・」
突然耳鳴りがして物凄い倦怠感に襲われたんです。僕は堪らず其処にしゃがみ込んでしまいました。吐き気も止まらず今まで感じた事のない様な気分の悪さでした。
・・・それからしばらく経ち何時までも僕が出て来ないので、心配した友人達が「おーい!何処だ?」と叫びながら僕を探しています。
本当は立ち上がって此処に居ると言いたいのですが、僕はまともに動く事も出来ませんでした。それでも何とか「此処に居るから助けて~」と言う事だけは出来ました。幸い僕の近くには山田君と云う友人が居て「T?其処に居るのか?」と駆け寄ってくれました。
そして彼が僕に駆け寄り私の肩を掴んだその瞬間です。それまでの倦怠感が嘘の様に消えて僕は普通に立ち上がる事が出来ました。
「さっきまで凄く気持ち悪くて、マジで動けなかったんだありがとう」と山田君に言いましたが、山田君はまとも聞いていない様でした。
それよりも驚いた表情で僕の方を見ています。
!?・・・・いえ正確には僕の後ろを見て驚いていました。僕も気になり背後を振り返ります。
「あぁっ!!」
僕もそれを見た時は恐怖のあまり叫んでしまいました。そうなんです。噂で聞いていた正に十字架の形をしたキリスト教徒のお墓が目の前にあったのでした。