これは数年前に僕が体験した話です。厳密に言うと心霊体験と言える物ではないかもしれませんが、今でもふと思い出す事があるので書く事にしました。
ある日の話です。僕は夢を見ました。何故か高校時代の教室に僕は居ます。
周囲も賑やかで休み時間でした。
夢の中には耕太君(仮名)と云う友人が居ました。
彼は高校の頃のクラスメイトで学校が終わった後なんかには良くカラオケに行ったりもした仲の良い友人でした。
そんな耕太君が僕に嬉しそうに話しかけて来ます。「とまチョップ遊びに行こうよ♪」
耕太君からの遊びの誘いです。高校を卒業して何年も経っているはずなのに僕はこの夢を見た時は、本当に不思議な話なのですけども高校生気分で目の前の友人である耕太君とお喋りを楽しんでいた様な気がします。
でも・・
でも・・僕は何か違和感を感じていました。
あれ?確か彼って・・
何か肝心な事を忘れている気がしたのです。
遊びに誘われて嬉しい気持ちはあるのですが、何故か気分が乗らないんです。なので、僕は耕太君からの誘いを断りました。
「いや・・行かないかな・・」
「えっ?どうして行こうよ」
耕太君は余程遊びに行きたいのか更に誘って来ました。
僕はこの時少しずつですが、不安な気持ちにもなっていました。そしてやっぱり行かない方が良いと思う様になり「いや、行かないよ」と更に断りました。
「何で?何で?行こうよ・・一緒に行こうよ・・」
僕が「行かない」と言えば、それでもしつこく食い下がり「一緒に行こうよ」と誘って来る友人との押し問答が続きます。
ただ・・
そんな会話を続けている中で、僕は最初に感じた違和感の理由をとうとう思い出していました。
そしてその事実も含めて強い口調で耕太君に言ったのです。
「だから行けないって!そもそもお前、もう死んでんじゃんか?」
そうなんです。これが僕が思い出した違和感の理由でした。高校を卒業してから1年後に彼は首吊り自殺をしていたのです。僕も告別式に行きました。後日、共通の友人から聞かされた話でしたが、彼は就職をしてからノイローゼになってしまったのが原因だったそうです。
そして・・・そうやって僕が強い口調で断った瞬間でした。
それまで明るかったはずの教室内が一瞬で暗くなったのです。
僕は恐怖のあまり飛び出すように後ずさりをして教室から出ました。
ドアの向こうには真っ暗な教室が見えます。
でも・・でも真っ暗なはずなのに耕太君の姿だけははっきりと見えました。
さっきまでの笑顔はなく青白い顔で表情は何処か寂しげに僕の方を黙って見つめていました。そして此処で僕は目を覚ましました。
この夢を見てから数年経ちますがあれ以来、彼の夢を見る事は今の所ありません、勿論ただの夢だったと言われればそうなのかしれませんね。
ただ時々ふと思い出す事があるんです。もし・・もしあの時一緒に行くって応えていたら、どうなっていたのかなって・・